ふたり

ゆかと敬は全く違う人生を歩んできて別々に死んだ。男と女が入れ替わり新しい人生が始まった。

初めの一歩7 

「飛んでもないファイルだな。よくこんなのが手に入ったな」
 金子がファイルを手に口から泡を吹いている。
「小山と話したが、このファイルは確かに公安のナンバーが付いている。このナンバーは極秘案件と言うことらしい。東京の元公安の探偵に聞いた。やはり公安が動いていたのは事実だった。その彼が言うにはこの指示はもっと上から来ていると言っていた」
「上?」
「公安は自分から仕事を増やすことはない。それにあの病院の医者が来ていたのは危険だよ」
 今朝は寝ているシオンを叩き起こしてきた。
「しばらく預かるが想像していたよりエロイな」
「体が子宮なんです」
 応接室で長い足を拡げて寝ている。スカートの奥に黒のTバックが見えている。
「襲われますよ」
「いや私はもう立たない。妻と離婚したショックから駄目になっている。店には?」
「田舎に帰ることになったと敬が伝えています」
「店は住まいは?」
「そんな申告のいらないところなんです。出来るだけ次のところを探します」
 シオンが起きて肘をついてこちらを見ている。
「まだ狙っているんだ」
「そう。シオンは女でいたいでしょ?」
「女がいい」
「オッパイが見えているよ」
 金子が慌てて目をそらしている。これはもう陥落だ。








2017/10/03 Tue. 06:50  edit

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初めの一歩6 

 夜中に敬と私はシオンに起こされて2時間も汗だくのハードな運動につき合わされた。それで今朝はシオンはTバックもつけないで爆睡している。敬は目をこすりながら『橋本』に出かけた。私は今日はそのまま布団に潜り込んで眠る。
 金子探偵が例の大阪の調査会社の表からの調査をした。今日はそれに基づいて裏の調査に入る。金子の言う大阪駅前ビルの1室にすり抜ける。ここは彼の調査では元公安出身の社長だと言うことで、公安がらみの調査をよく受けているとのことだ。『Mオフィス』とドアに書かれている。
 思ったより広いフロアーにスーツ姿や私服の男女が5人座っている。隣の部屋に応接室と社長室がある。
「どうだ。調査の状況は?」
 60歳くらいの髭の男が前にいる社員に聞く。
「逃げ出した男と女が大阪にいると言うことですが、私が思うにその女が昔住んでいた通天閣辺りの簡易宿泊所やホテルに昨日から5名入れています。だがこれといった手掛かりはありません」
 やはり私たちを探している。
「それとアキラが攫う予定の女は?」
「これは見つけています。カラオケ居酒屋で働いています。どうしましょうか?」
「公安に連絡して聞いてみる」
 シオンもまだ狙われている。ドアが開いて受付の女が覗く。社長は依頼ファイルを机の上に置いて部下と出ていく。私は指先に力を込めるとそのファイルを開いて携帯で撮る。まだまだ私の知らない能力があるようだ。着ている服の中に入れてしまえば見えなくなるのだ。
 フロアーにでるともう社員は誰もいない。受付の女がコーヒーを運んでいる。応接室に入ってみて驚いた。そこにいたのはナンバー2のあの病院の片腕の医師だ。










2017/10/02 Mon. 05:55  edit

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初めの一歩5 

「こちらに入ってくれ」
 金子が応接室に私を呼ぶ。テーブルにノートパソコンが置かれている。画面にフリーライターの小山が映っている。どうも本が乱雑に積み上げられた部屋が小山の仕事場のようだ。
「ここは今回の仕事のために長期契約したビジネスホテルだ」
 金子が説明する。
「連載開始から反響が多く、編集長から下位のサブ連載から2位の連載としてページも増やされた」
「それはよかった。ゆかの給料が払える」
「だが問題も予想通りに出てきた。あれほど特定な情報を避けたが、ある調査会社から編集長を訪問してきた。私はこの記事には小山と名前ではなく偽名を使っている。名前を明かさないと言う契約だ」
「調査会社はどこだ?」
 画面に名刺を押し付ける。
「大阪の調査会社だ。早急にここを調べてくれ。どうもゆかと敬を特定しているようだ。それも大阪をターゲットとしているようだ。ゆかも注意してくれ」
「はい」
「それと次は二人の病院での記事を掲載する。送ってくれたのをすでに修正した。それをパソコンに入れたからすぐに見てくれ」
「人体実験のモデルは何体まで確認できた?」
「28体までだ。そちらで12体調べてもらったな。これからこの28体の資料を完璧に作る。それを手伝って貰いたい。ポイントは死亡日時と本人の写真。墓の有無。救急車で運ばれた時の症状等。これはいつか記事に載せる時期が来る。何よりも生き証人がゆかたちだ」








2017/10/01 Sun. 06:01  edit

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初めの一歩4 

「凄いね!」
 パソコンに昨日のラブホに入る不倫カップルのホテルから出てくる写真、部屋に入る後姿の写真が張り付けられていて、彼女が調査文章を書いている。最近は目を見ない限り話しできるようになった。
「もう1年になるから」
「でも私こんな文章書けないよ」
「私子供の時から詩を書いていた」
「金子さんとホテルに行ったことがある?」
「ある」
「エッチされなかった?」
「あの人はもう立たなくなったと言っている。私は一度抱かれたいと詩ばかり書いている」
「気持ちいいよ。チエは幾つ?」
「20歳になった」
「私より姉さんなんだ」
 電話がかかってきてチエが出る。
「はい。はい。納期は1週間ですね。書類は書留で届くのですね?」
「どこから?」
「お得意様の弁護士事務所。離婚調停の調査を依頼してくる。ここの半分の仕事がここから来る」
「チエ、一度弟と寝てみない?」
「なんと大胆な!?」
「私は元男だから。男前よ」
 チエは顔を真っ赤にしている。だが私と敬はセックスマシーンとこの世に生まれた。






2017/09/30 Sat. 07:09  edit

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初めの一歩3 

 朝敬と二人でマンションを出る。
「なんかあの尻を見るとやりたくなるよ」
 布団からシオンの黒のTバックの尻が見える。シオンは戻ってくるとシャワーも浴びずにTバックだけで裸で布団に潜り込む。寝相が特に悪い。私は笑いながら敬の盛り上がったジーパンをつんと突く。これが日課になっている。
「最近は元気だなあ」
 朝事務所に着くともう金子は来ていてコーヒーを飲んでいる。私もサンドイッチを開けて朝食だ。金子もサンドイッチだ。
「奥さんが朝してくれないの?」
「会社を辞めた時離婚したよ。娘は年に何度か食事するがな。ゆかと同じくらいの年かな。だからゆかは娘と同じ感じがする」
 こんな調子で仕事を始めるのは9時半を過ぎてからだ。同僚の女の子はほとんど口をきかない。仲が悪いのではなく自閉症で金子が友達から預かっている。だがパソコンは得意なようだ。
「記事が始まった」
 全国版の有名な週刊誌だ。『黒社会』と言う特集がサブ記事で連載が始まった。ナンバーを暈した救急車の写真がインパクトがある。これは実際のアキラを載せた救急車だ。周辺の景色も暈している。だが文章は私の『ある日』の日記だ。
「まるで私の文章ではなくて凄いわ」
「彼は文才もある。だが問題は反響だな」
「この顔を暈した少年は?」
「ゆかの写真がないのでアキラの写真を使ったようだ」
 ちょっと嫌だなと思う。
「今日は私は何をすれば?」
「私とラブホに行く」
「エッチするの?」
「浮気追跡だよ」
 隣の女性が珍しく笑っている。











2017/09/29 Fri. 06:14  edit

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