ふたり

ゆかと敬は全く違う人生を歩んできて別々に死んだ。男と女が入れ替わり新しい人生が始まった。

本丸2 

 敬にはそちらに2番目のカップルが捜査に参加したと忠告した。敬にはカップルが1年以上生きた実績がないことは伝えなかった。その1年が近づいてきている。2番目のカップルもその1年を迎えるころだろう。金子には同じ情報とカップルの似顔絵を書いて送った。
 久しぶりに前嶋病院に潜った。あのリビングを懐かしそうに覗いた。だがカップルは1組だけで私の知らない新入りだ。私のいた部屋に入る。カプセルにまだ包帯を巻いた男が寝かされている。新しい検体だ。その体に入り込む。夢の中はベットで裸の女が男たちと3Pをしている。これはあの看護婦だ。やはり手術されたのだ。
 それから医院長の部屋に入る。机に向かって何か書類を書いている。移転計画書だ。今年の2か月前からすでに移転が始まっている。移転先は被ばくした福島の中だ。村の名前を覚える。移転費は160億、移転期間は2年。だがこの予算が現政権では出にくいようだ。
「ああ、代表ですね?予算は通らないのですか?」
「今回の総裁選で総理の交代後だな。まず使わない設備から移してくれ」
 総裁選?医院長は書類を閉じると金庫を開ける。この金庫には『メランゲ』と同じバリアーが張られている。金庫の中から通帳を出してくる。あれが死んだ医師が取ったコピーの通帳だ。真横から覗き込む。今年は振り込みが50億に減っている。それに残高は12億しかない。
 私はその部屋から離れると、カプセルの棟に向かう。棟の前には大型トレイラーが停まっていて、作業着の男たちがカプセルを積み込んでいる。ボディガードが周りを取り囲んでいる。建物の中のカプセルは半分ほど空になっている。私はカメラを構えると何枚も隙を見て撮りまくる。
 いよいよ前嶋病院を隠す気のようだ。この写真はすぐに小山に送ろう。





2017/04/26 Wed. 06:22  edit

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本丸1 

「目が醒めないので心配してたのよ」
 冴の顔があった。
「やはり公安の別館が『メレンゲ』の本部だった」
「私も成果があったわよ」
 パソコンにUSBを入れる。3日間の『メレンゲ』の出入りを撮っている。冴が編集した映像を見せる。
「これが『メランゲ』の代表よ。もう80歳になったそうだわ。4代前の総理の時は内閣府にいて、3代前には公安に移って『メランゲ』の代表に。この横に写っている60歳代の男が公安のトップよ」
「公安はすべて『メランゲ』の巣なのね?」
「それと前嶋病院の医院長も最後の日には顔を見せていた。その日は何か重要な話があったようよ。この男は与党の藩士流派のボスよ」
 私はポケットからカメラを出してパソコンに繋ぐ。拡大してページを繰っていく。
「『メレンゲ』は前嶋病院の生体実験を契機に作られたようね?今の前嶋の娘の死に対して生体実験をして生き返らせたとあるわ」
「15年前よね?だが僅か6か月で死んだ。それから5年かけて研究を続けて当時の検査を分析している。その果てに第1号のカップルの生体実験を私的に行った。この時にあの殺された医師が初参加している。男女を入れ替えることを彼が提案した」
「これがその時の事例説明ね?第1号はゆか達ではなかった。彼らは1年生きた。体を抜け出すことにも成功している。だが子供を産んだ時に女性は死亡。男性は気が狂い自殺したとある。この論文が『メランゲ』を生んだの」
「研究班に回すわ」
「これ一部小山に回していい?」
「もう警視庁と公安の戦争は始まったからいいわよ」







2017/04/25 Tue. 06:48  edit

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メレンゲ12 

 夜になるまで資料室に隠れていた。体を抜け出しているときは空腹にはならない。だが寝たままの体は衰退していく。離れすぎると戻れなくなるかもという恐怖がある。マニュアルというのがないのだ。やってみて経験していく。敬には私から教えている。
 隣の研究室に入ると5つのベットにみさきと男性が寝ている。後の医者は帰って行って誰もいない。あのパソコンも切られているのでバリアーはもう切られているのだろう。まず安全のためみさきの夢の中に入ろう。外で会うのはまだ危険だ。
 みさきの夢の中は暗い部屋の中だ。ここではみさきは男の子で絵を描いている。テーブルの上にはカップヌードルが何個も空いていてポットがある。絵は母親の顔のようだ。
「みさき?」
「誰?」
「ゆかよ。覚えてない?」
「ゆか?」
「病院のリビングであったし、抱いてあげたの覚えている?」
「思い出した!二人が逃げ出して大変だった。ここでも探しているよ」
「みさきも体を抜け出せるようになったのね?」
「でもまだ部屋から出れないし、彼は全く駄目」
「他の子達は?」
「一番上のカップルは実験中死んでしまったわ。でも2番目のカップルは成功してここからも出て大阪にゆかを探しに出ている」
 これは敬に注意しておかなければ。
「私に会ったことは話さないで?」
「はい。でも時々会いに来てくれる?」
「いいよ。病院の方では新しいカップルが?」
「それがマスコミが煩くなって新しい検体が来ないって言ってたわ」









2017/04/24 Mon. 06:49  edit

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メレンゲ11 

 冴に特殊な小型のカメラを借りた。冴は先に公安の建物に向かった。私は体から抜け出すと公安の別館の建物の中に入った。冴は3日前から公安の前のビルで出入りする人を撮影している。1階から5階まで見て回るが4階の資料室で足を止める。ここに入った女性の顔に見覚えがあった。
 だが資料室を見渡したが見当たらない。かなり広いが中に誰もいない。入口から出た気配がないが出口はどこにもない。資料のロッカーに前嶋病院というプレイトが着いたのがある。ロッカーの中では大きい方だ。新しい職員が入ってきてこのロッカーの鍵を開ける。そこからファイルを出してきて棚で調べているようだ。
 私は1冊のファイルを開いて覗き込む。これは4代前の総理の時に『メレンゲ』ができた経緯が載っている。私は取りあえず何ページもカメラを撮った。そのうちに職員が動き出してロッカーを閉めた。私は慌てて見えないのに棚の横に身を隠す。壁が開いて先ほどの女性が出てくる。この奥に部屋があるのだ。
「今日は検査の日だね?」
「ええ、でも病院にいるより楽しいわ」
 みさきだ。前嶋病院で最後に会ったカップルの女性だ。あの男性はどうしたのだろう。みさきがファイルを手に壁の中に戻る。私は壁をすり抜ける。中にはベットが5つも並んでいてその後ろに机が並んでいる。白衣の医者が3人、ベットにはあのカップルの男性が寝ている。
 みさきが呼ばれてベットに入る。私は慌ててテーブルの下に隠れる。みさきは私と同じように体から抜け出せるのだろうか。それなら私が見えるはずだ。
「よし、体から出たぞ」
 パソコンを見ている医者が合図を送る。ここには特殊な電波が張られていて、パソコンにみさきのハレーションしたような姿が映っている。この範囲には近寄れない。カップルの男は体を震わせているが、体から抜け出せないようだ。







2017/04/23 Sun. 07:07  edit

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メレンゲ10 

 看護婦は救急車であの病院に運ばれたようだ。余程検体が不足しているようだ。看護婦も男にされるのだろう。
「どう調子は?」
「やはり長距離移動は駄目ね?今日は検査を休みにして」
「私もこれから編集室に出かける。公安がね、踏み込んで原稿や資料を運び出した。かなり焦っているわ」
「小山は?」
「またホテルを移動したよ」
「シオンは?」
「AVに出るようだわ。これ見て1万回の視聴があったらしいけど今は消されている。警察で手に入れた」
 これは『Mオフィス』で撮られた全裸映像だ。ぼかしも入っていない。
 冴が部屋を出ると鍵をかけて机の下のダンボール箱を引き出してくる。看護婦が持っていた鞄から拝借した袋だ。通帳のコピーに通帳と印鑑にカードだ。コピーには4つの数字がメモされている。コピーはとんでもない数字が並んでいる。どうも『メレンゲ』からの振り込みが並ぶ病院の通帳だ。そしてこちらの通帳はあの医師が無断で引き出していたお金が貯まっている。5億もある。
 この殺された医者のこの通帳はうかつには触れれない。恐らく引き出したことがばれて殺されたのだからこの通帳も見張られていたのだろう。看護婦は引き出したに違いない。
『『メレンゲ』の本部を見つけた。これは警視庁のチームから送られてきた資料の中で12か所の場所を調べて回った。何と公安の建物の別棟にプレートのない5階建てものがある。ここは4代前の総理の頃は内閣府にあったのだが、3代に移った時にここに移っている。職員は100名くらいいるようだ。それで相談だがここに潜入してほしいんだ』
と小山から地図を添付したメールが来た。
『いいよ』
とメールを返してそのままベットに潜り込んだ。













 

2017/04/22 Sat. 07:12  edit

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