ふたり

ゆかと敬は全く違う人生を歩んできて別々に死んだ。男と女が入れ替わり新しい人生が始まった。

あの日9 

 あれから3日後、男は救急車で運ばれて全治3か月の骨折だ。その間に裏ビデオの店とドラッグの部屋に警察が入った。今日は阿倍野にある金子探偵事務所に呼ばれている。
「中に入ってくれ」
 金子は現れた私を応接室に入れた。若い女の子が一人電話番をする小さな事務所だ。応接室にフリーライターの小山が座っている。思っていたより若い。
「私は35歳。元週刊誌の社員だったが首になってフリーになっている。彼とは何度か行方不明で調査をしてもらっている。本論に入るよ」
 彼は撮ってきた写真をテーブルに並べる。アキラを運んできた救急車の写真、病院の建物、死体の保存されたカプセルの写真、多数だ。
「驚いたよ。こんなことが日本であるとはな」
「だが危険だ」
 探偵が口を挟む。
「そうだ。無防備に記事を出したら潰される。だからしっかりとした週刊誌を選んだ。それに核心から離れたところから取材を載せる。このカプセルは最後の最後だよ」
「君はあんな居酒屋はやめてここで働かないか?」
「あんなとは言わないで友達が勤めている。私は何をする?」
「記事の指導をしてもらいたい。給料は初めは期待できないがな。だが記事を載せ始めると結構払える」
「働くわ」
「まずは『ある日』のことを詳しく作文してほしい」
「後で知ったことも入れてもいい?」
「もちろんあまりにも過激なのはカットする」
と言うと3つの携帯を出してきた。
「3人だけがこの携帯でしかやり取りしない」
 ここでチームができた。









2017/03/19 Sun. 06:17  edit

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あの日8 

『やはり救急車はあの病院に着いた。小山が山の反対側に猪の入口を見つけていた。陽が落ちたら入ってみる』
 探偵からのメールだ。今日は朝からシオンの引越しを手伝っている。彼女はどうしても風呂のない部屋は駄目だと言うことで3人で今の簡易宿泊所から通天閣の裏に移ることにした。3人が川の字で寝ることにした。セックスも週に1度と決めた。それにシオンのドラッグも取り上げた。
『病院には相当数のガードマンがいます。一番背の高い建物には保存された死体がカプセルに入っています。100体ほどありますが、保存されず焼却されている死体もあると思います』
 私はメールを返して敬と二人で布団に入る。4時になったら起こしてくれるようシオンに頼んだ。これはアキラに依頼していたドラッグの卸しをしている男の動きだ。部屋をくぐり抜けて男が電話している男の後ろに立つ。
「女じゃなかった?」
 私は受話器に耳を寄せる。
「病院からクレームが入っている。すぐに相手の女の方を捕まえろ。そうしないとお前の店に捜査を入れると言ってるぞ」
「分かったよ。これは俺がやる」
 男は椅子を蹴飛ばして部屋を出る。
「まだシオンは安全ではない。どうする?」
「少し荒っぽいがしばらく入院してもらうよ」
 男の後ろをついて建物の外に出る。男は赤信号でイライラしながら立っている。
「敬は下がっていて」
と言って私はピッタリと男の背中にくっ付いた。
「おい!何をするんだ」
 その声とともに男は押し出されるように車に飛び出した。
「あなたは人を殺すのに2度も手を貸した」




2017/03/18 Sat. 06:52  edit

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あの日7 

 シオンを抱きかかえて部屋に戻る。敬が起きて座っている。
「敬これはどういうことだ?」
「シオンはサービスし過ぎだよ。アキラが5千円出したのでフェラしたんだよ。その時にアキラはシオンのビールにドラッグを入れた。それで私がグラスを入れ替えた。アキラはそれを飲んだんだ」
「敬どこにもいなかったよね」
「だから敬も私も透明人間になれるのよ」
「ほんとだったの?」
「シオンは口にゴムを含んでいた」
「よく見ていたね」
「ずっと横にいたんだからね。シオンのTバックは黒、昼にトイレでオナニーをした」
「もういいわ」
「怒っている?」
「感謝しているわ」
『今救急車は東名に入った。救急車の後ろに黒い車がぴったりついている。長い追跡になりそうだ。伊豆半島の病院でフリーライターの小山と会う。救急車に乗っているのは誰だ?』
『本来は若い女と言う指令でシオンにドラックを飲ませる予定だった。それが本人が飲んでしまった』
『分かった詳しいことは戻ってきてから聞く』
「その探偵信頼できるの?」
「信頼するしか頼るところがない」
「シオンも仲間だよ」
「敬も入れてもいいよ。いい女に囲まれて幸せね」










2017/03/17 Fri. 07:03  edit

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あの日6 

 アキラは私かシオンかどちらかに手を出してくる。私は探偵と別れると串カツ屋の通りを歩いた。通りにはまだアキラがいた。私を見たが特段反応はなかった。一度部屋に戻ると敬が眠っている。シャワーを浴びてジーパンからスカートに履き替える。業務用にTバックを履くようにしている。お尻の割れ目を見せるだけで2千円が取れるのだ。
 5時ちょうどに店に入ると、もう常連がカウンターに3人並んでいる。
「いつものお尻出しなよな。3人で5千円だ」
「値切るな。今日はその気じゃないの」
 カウンターに入ってカラオケの番をする。7時になってシオンが来る。背中に敬が疲れた顔で立っている。
「悪いな」
 心の中で詫びる。シオンはもう先ほどのおっさん達に黒のTバックでお尻を見せている。
「長い髪が出ているよ」
「切るとチクチクするから嫌い」
 5時間はあっという間に過ぎる。いつものように先に『橋本』に行く。だがアキラの腹心が電柱のところにいる。
『無駄になるかもしれないけど、『橋本』の横に車を付けてくれない?』
 昼に会った探偵だ。勘はよさそうだ。
『救急車が来るのだな?』
 しばらく『橋本』の窓から見ていると、サングラスをかけたアキラが入っていく。腕時計を見る。30分が過ぎた。何も起こらないのか?私の後ろで妹のようにみよちゃんが覗き込んでいる。急に店の中が慌ただしくなる。
「あの通路に救急車が来ている?」
 やはり待っていたのだ。隊員が担架を抱えて入っていく。私はスカートを捲りあげて走るだす。担架と入れ違い私が入る。だがシオンが白い顔で立っている。







 

2017/03/16 Thu. 07:21  edit

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あの日5 

 私を狙うかシオンを狙うか。
『今日、1時に通天閣の下の喫茶店で私の雑誌を手にしている男に会ってくれないか?』
 フリーライターからのメールだ。
「敬、今日一杯シオンに付いていてくれない?」
「背後霊だな」
 2人で『橋本』で昼ご飯を食べる。
「敬君は?」
「今日は風邪気味だから休むって」
 今はシオンは近くのビジネスホテルに泊まっている。
「敬と悪いことしたんじゃ?」
 シオンは薄々二人の関係を感じているようだ。シオンの横に敬がいる。私は出ていくと腕時計を見る。5分ほど遅れそうだ。ここには入ったことがない。思ったより客が入っている。男が雑誌を上げた。
「美人だな?」
「公務員みたいな黒縁の眼鏡」
 名刺をテーブルに置いた。金子探偵事務所、所長とある。
「私は」
「ゆかさんだね。私は50歳になるまで法務局職員だった。小山は大学の同窓の弟だ。さあ本論に入ろう。藤崎徹、16歳で死亡。あの日ドラッグで救急車で運ばれた記録はない。だが間違いなく君が運ばれたのを見ていた人がいる。でも君が男だったとは信じがたいがね」
「やはり戸籍からは抹消されて?」
「死亡は公安から出ていた。一度私の事務所に来てほしい。小山からも調査依頼が来ている。だが本人の同意がないとな」
「頭を整理したら訪ねます」






2017/03/15 Wed. 06:15  edit

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