ふたり

ゆかと敬は全く違う人生を歩んできて別々に死んだ。男と女が入れ替わり新しい人生が始まった。

フリーライター1 

 敬との暮らしはゆっくりと流れた。簡易宿泊所でも顔を覚えてもらえるようになっていた。ここでは2人は姉弟だ。私は新しいカラオケ曲を覚えて時々カウンター席に座って胸やお尻を触れせるようになった。別に嫌なこともない。敬は半纏を着て呼子をするようになった。
 二人は暗黙のうちに体を交えるのは週1回と決めた。モルモットのように作られた運命に精一杯反発している。精神病の逃亡者の張り紙も貼っているところがめったになくなった。だが私は用心深く店に捨てられた新聞や週刊誌を隈なく見ている。今日は週刊誌の小さな記事に目を止めた。
 人体売買か!?と言う奇妙は見出しがついている。身元不明の若い男女が心肺停止状態で死亡として遺体が消えているとその記者が書いている。最近買った他人名義の携帯だ。
『この記事を書いた小山と言う記者はいませんか?』
『ああこの記事ね?フリーライターが書いているの。あなたはどちらの?』
『大阪ですが』
『彼は東京で数社の記事を書いているので携帯を教えるので自分でどうぞ』
 今日は寒さが厳しいので客足が少ない。
「ねえ、あんた常連とは寝ない?」
 彼女も新しいホステスでフイリッピンとのハーフだと言っている。
「姉さんは8千円で寝ているけど、私は1万円もらっている」
 昔からそういうことが当たり前だった。シオンもカラオケ居酒屋で働いていた。彼女もあの頃は週に3人ぐらいと寝ていた。それで私に寿司を奢っていてくれた。
 私は頷きながらその携帯番号を押したが、留守電になっていて伝言を入れる。
『一度記事のことが聞きたいのですが?』




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2017/02/28 Tue. 07:07  edit

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逃亡11 

 簡易宿泊所の玄関に私と敬の写真が貼られた。私は長い髪をしていて心持ほっそりとした顔になっている。だが今はおかっぱ頭に丸顔に化粧されていて雰囲気がずいぶん違う。敬は短い髪を七三に分けていているが今はちょっとニューハーフの感じがする。やはり精神病患者として手配されている。
 だが管理人も全く私たちを見ていて気にならないようだ。3時過ぎに『橋本』の定位置に座る。今日はみよちゃんが小皿におまけの卵焼きを入れてくれる。
「いくつになったの?」
「16歳よ」
「大きくなったね?」
「変な人ね?初めて会ったのに?」
「いや始めた会ったとは思わないのよ」
「でも私も最近そんな気がしてたわ。でも敬は昔ここに来ていた人に顔が似ている」
「その人ってここで倒れて救急車で運ばれた人?」
 敬が口を挟む。
「敬はみよちゃんと一度映画を見に行ったら?」
「どうして?」
「アキラとは付き合うな」
「アキラは嫌い?」
「嫌いだよ。あいつがドラッグの裏の仕事を紹介したんだ。私は呼子をしながらドラッグを売っていた。今頃思い出したのよ」
「敬私今やっている漫画が見たい」
 もうみよちゃんは彼女になっている。






2017/02/27 Mon. 06:46  edit

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逃亡10 

 昼遅めに敬と『橋本』で食事をして、私は向かいのカラオケ居酒屋に5時に入る。しばらくは10時に上がる。敬が鋏と化粧品を買ってきて私をおかっぱ頭にして顔のイメージを変えた。逆に敬は長くなった髪を少女ふうに束ねて見た目女の子になった。
「今日はどうする?」
「私も仕事を探す」
「働かなくてもいいよ」
「一人で部屋にいるのは嫌」
と言って5時前には別れて商店街を通天閣に向かって歩いていく。
 私は初日からおじさん達に気に入られてもう常連ができている。手癖が悪い客は何かと腕を握ったり、カウンターに座らせてお尻を触ってくる。だがこの店は使った客の代金の1割が基本給になる。50代の女将は常連と寝ていると言う噂だ。
「あんたの年齢ならもっといい仕事あるのに?」
「少しここで慣れてからね」
 10時近くになると表に敬の姿が見える。どこで買ったのか毛糸の帽子を被っている。横にアキラが立っている。なぜだろう?常連が酔っぱらって抱き付いてくる。隣の席では先ほどの女の子がお尻を触らせて千円札を3枚もらっている。私は躱すように立ち上がるとそのままひけてドアの外に出る。
 外に出るとアキラの姿はもうない。
「どうした?」
「明日からゆかが働いていた串カツの呼び込みをするんだ」
「どうしてアキラが?」
「彼に頼んだ。彼はゆかのことを覚えていたよ。姉ちゃんを紹介しろと言っていた」
「あいつは女好きだから」








2017/02/26 Sun. 07:12  edit

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逃亡9 

 手持ちの100万円がどんどん減っていく。ここ毎日昼ごはんに『橋本』に行っている。
「いつも二人で来るね?まるで恋人みたい」
 そう言われていつもの窓側の席に並んで座る。ここは店の人の死角になるのであまり座りたがらない。だからゆっくり座って入れるのでここでよく一人で食べた。平日はここに2時半くらいまでいて3時に半纏を着て串カツの店の前に立つ。
「みよちゃん、この辺りで働くところあるかな?」
「なんで私の名前知ってるん?」
「いえ、お客さんが呼んでいたから」
 みよちゃんがカウンターから出てきて大胆にも私の髪を上げて、
「へえ、可愛いやん。前のカラオケ居酒屋に話したげる」
「弟は?」
「男は駄目よ」
と言いながら急に私の股座を掴む。
「女だ!」
「あんたエッチね!」
「おかまじゃ困るの。この辺りは多いから」
 敬が笑っている。
「みよちゃんは面白いな」
「あんた私の彼氏にならない?」






2017/02/25 Sat. 07:20  edit

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