ふたり

ゆかと敬は全く違う人生を歩んできて別々に死んだ。男と女が入れ替わり新しい人生が始まった。

夢10 

 夢の径で思い切って草をむしってこちらの町に来た。今日は敬が先に来ていて窓の外を見ている。
「早く来た?」
「今来たところだよ」
「ここに来るまでの径で草をちぎったのよ」
 私はぼけっとに手を入れて握ってみる。だが手のひらには何もない。
「何もないね?」
「と言うことは私が通ってくる径は夢なのね?」
「と言うことは僕が通ってくる径も夢と言うことになるね?」
「だからみんな違った径の夢を見ている。私のところの看護婦が新しくなった」
「こちらは初めから同じ人だよ」
「この看護婦の言うにはこの部屋ではカメラで監視されているそうよ。恐らくこうしてしゃべっているのも録音されていると思う」
 私は備え付けられているメモ用紙に書き込む。
『重要なことはこれからここに書き込むようにしよう?』
『いいよ』
『じゃあこの白紙の用紙をポケットに入れて』
『それでどうするの?』
『敬はいつもパジャマからその服に着替える記憶ある?』
『ないな』
「今日は部屋に入ってキスをしない?」
「なんだか変なだな」
「私が嫌い?」
「何か自分を抱いているような気がする」








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2016/12/31 Sat. 07:16  edit

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夢9 

「始めまして」
 新しい看護婦が入ってきた。少し年配だが優しそうだ。
「前の看護婦さんは?」
「退社したわ。ここは給料はいいけど寂しすぎると言っていたわ。あなたは少し悪い症状が出ていると言う注意を医院長に受けている」
「悪い症状?」
「このカルテには現実と夢が区別できなくなっているとあるわ」
「そうなんです。この病室の私と隣の町の私はどちらも現実?」
「隣の町に入ったことがないからわからないわ。だけどそこで学習していると記載されているわ。私たちは病室だけが仕事場だから。彼女も隣の町に入ったことがないと言っていた」
「私がこの病室を出るのを見たことがあるって言っていた?」
「この管理表ではあなたが寝たのを確認して仕事が終わると書かれている。だから出ていくのを見ることはないわね」
 看護婦はカプセルを空けてパジャマを脱がせて全裸にして隅々まで点検をする。これは今まで通りだ。この時に前の看護婦は私のものを吸った。だが今はそのものはない。
「ここ使った?」
 クリトリスを開いて覗き込んでいる。
「トイレで使った」
「セックスでは?」
「まだ」
「スケジュールが遅れているようね。相手の体調がよくなかったようね?」
「そう書いてあるのですか?」
「ええ、ここは向こうの町の管理者が記入している。だからどちらも現実のことですよ」
「どちらも現実?」









2016/12/30 Fri. 07:11  edit

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夢8 

「敬は?」
「あの子はしばらく顔見ないね」
 年上の女性が珍しく私のテーブルに座る。
「あなたは昔の記憶残っている?」
「ほとんど覚えていない。ただ看護婦に危険ドラックで交通事故を起こしてここに運ばれてきたと聞いた」
「あなたの看護婦結構しゃべってくれる人なんだ。私の看護婦は仕事以外は何にもしゃべらないのよ。でもね、そっと診断書の写真を見た。ショックだった」
「何がショック?」
「顔顔よ」
「これ不思議に思っていることなんだけど、私たちカップルとして作られたような気がする。ひょっとして私の顔は敬の顔に似ているのじゃないかと?」
「私の場合はそれはないと思うわ。今の彼の顔気に入っているから」
 その彼が部屋に入ってきた。
「ゆか一緒に部屋に入らない?」
「敬を待ってる」
 二人が部屋に入ってしまうと部屋は私一人になる。それで思い切ってドアを開けて自分の入ってくる通路を調べてみようと思う。ドアに手をかけるがうちからは開かないようになっているようだ。何度も押しているうちに頭が割れるように痛くなる。それで帰るときはどうしているのだろうかと考える。だが帰るときの記憶がない。
「あれ敬」
 敬がボーとした顔で部屋に入ってくる。
「ずっと体調がよくないんだ」
「休んでいたらよかったのに?」
「無理矢理に起された気がする」








2016/12/29 Thu. 06:56  edit

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