ふたり

ゆかと敬は全く違う人生を歩んできて別々に死んだ。男と女が入れ替わり新しい人生が始まった。

攻防5 

 シオンと部屋の中にいたのは僅か30分だった。医者が出て行き同時にまたセンサーのスイッチが入れられた。
「ゆか気づかなかった?」
 敬が言う。
「シオンは私たちが見えていたと思う。瞳が動いていた。だが私たちと判断したかは分からない」
 私の経験から行くと昔の記憶がぼやっと記憶の奥で残っている。だがそれはシオンではなくて交換された秘書であるはずだ。秘書の中にシオンは眠っているはずだ。階段の隅で敬と囁き合う。
「秘書が帰ってきた」
 敬が廊下を歩いてくる秘書を指した。秘書はずいぶん疲れているようで、額の汗を拭っている。何度か見た秘書とは別人のような雰囲気がある。鞄からセンサーのスイッチのリモコンを出して切るとドアを開けてカプセルに地被いていく。私は敬を引っ張って部屋の中に入る。秘書はカプセルに顔を突っ込んでいる。
 秘書は服を脱いで全裸になってシオンに重なっている。シオンの性欲があまりにも強かったのだ。カプセルのシオンも全裸にされて交わっている。私が覗き込んでいるとシオンの目が光る。やはり見えているのだ。敬も気づいたのか私の腕を掴む。
「シオンの口が動いている」
 まさかと見たが間違いなく動いている。
「また来たゆかだね?」
と言っている。
「シオン分かるの?」
「体は動かないけど意識はしっかりしているわ。でもあの秘書は私から力を奪っているけど、秘書の彼女も私の影響を受けている。でもどこまで及ぶかはまだ試しているところよ」
「体から抜け出せない?」
「それはだめみたい」
「秘書は透明人間になる?」
「できるみたいだけどまだ長くは無理なようよ。こうしてしっかり私を抱かないとだめなの」
「また来るわ」








 
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2016/11/30 Wed. 06:45  edit

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攻防4 

 秘書が国会に出ている。これをラブホテルで3人でテレビを見ている。遂に我慢が出来ずに冴が裸になって敬に跨っている。ゆかは珍しくテレビに見入っている。これは先日野党の事務長の部屋で見た秘書の視線だ。
「やはり秘書は大きく変わっている」
「どうして?」
 冴がとろんとした目で私を見る。
「目が緑色に光っている」
 敬にも見えるようだ。ひょっとしたら秘書は透明人間になれるようになったのかもしれない。
「冴、もう一度メレンゲの本部に潜るよ」
 それから二人はメレンゲの新しい部屋の前の廊下に立って戸惑っている。いつの間のこんな部屋ができたのか。入り口にもすべての壁周りにも天井にも床にもセンサーが付いている。明らかにゆかが来るのを想定している。全てもセンサーをここに集めたのだ。まだ秘書は国会にいる時間だ。
「なぜこの時間に?」
「秘書が戻ってきたら容易に潜り込めないよ。私はこの部屋にあの福島の相棒がいるような気がする」
「と言うことはシオンは殺された?」
「必要なものを抜き出したと思う。だがこれでは入れない」
 2時間も廊下の隅に座っている。これ以上経つと秘書が戻ってくる。その時白衣の医師が二人鍵を持って現れる。一時センサーの電源が切られたようだ。このセンサーは体にはよくないようだ。開いたドアに飛び込むように二人で入った。白衣の医師がカプセルを開いて腕に注射をする。
 これは!あの相棒ではなくシオンだ。
「どうしてこの女が?」
「あの男は今の彼女と相性がどうも悪い。それで医院長が生命力の強いこの女に賭けたそうだ」
「同性のカップルは初事例ですよね?」
 シオンの顔を覗き込む。目が開いた。






2016/11/29 Tue. 06:53  edit

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攻防3 

 特捜の調査結果で秘書は公安の本部にいると言う。冴が特捜を配置して私と敬は近くのラブホテルに入った。だが冴も同じ部屋なので抱き合うわけにはいかない。彼女は携帯で特捜からの報告を聞いている。
「彼女が車で出たよ。野党の本部に向かったようよ。ゆかも行って」
 二人が横になると次の瞬間見覚えのある事務長の部屋に入る。私は慣れない敬と本棚に隠れる。ソファーに反主流派のボスが掛けていてその前に秘書が座っている。事務長は自分の椅子に掛けている。
「小山と言う記者の記事は本当なの?」
「ああ、悪い。こちらに隠していたが見当たらない」
「だからどうしても国会の証人喚問が必要なのだ」
「あのゆかに盗まれたのでしょう?」
 どうも前見た時よりも精力を感じる。
「で総選挙は?」
「互角だな」
「父がメランゲの資金を使われるのを嫌がっていますよ」
「この選挙に勝ったら倍にして戻すさ」
「でも今の党首では心配ですな?」
「勝てば追い出すさ」
 秘書が戻るので二人も外に出た。
 目を覚ましたら前に冴の顔があった。
「どうだった?」
「秘書が来ていた。元気そうだった。国会証人喚問に出ると言っていた」
「やはりな」
「秘書は私たちを感じていたような気がするわ」
と敬が言う。











2016/11/28 Mon. 07:00  edit

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攻防2 

「これ見てよ」
と冴がUBSをパソコンに差し込む。
 全裸の女が5人の男と繰り返しセックスしている。その女は病院で飼い殺しにされていて全裸で全身の検査を受けていると言うシナリオだ。
「シオンだよ」
「この男Mオフィスにいた男じゃない?」
「そうよ。敬が最後にシオン本人を見たのは?」
「そうだな。もう4か月も前になるかな。でもその頃もAVの1作目を撮っていたと」
「警察で調べて見たけどこのAVの会社はMオフィスのダミーだった。もう半年前からシオンはここの仕事をしていた。実際に福島のメレンゲで撮影されている」
「確かにこの部屋はあの中にあったよ」
「これは想像だけどシオンをAVの話で引き寄せた。ビデオを撮りながらシオンの検査をしてOKが出たので福島に運んだのよ」
 どうして今更シオンを捕まえたのか?そうか!
「秘書は第1号だけど失敗作よ。恐らく体調も良くない。だから福島に帰った。シオンを使って再手術を?」
「警察も同じ判断よ」
 となるとシオンはあの福島で寝ている男にされたのか?
「次の情報。秘書は国会の証人喚問に出るわ」


2016/11/27 Sun. 06:57  edit

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攻防1 

 冴がしばらく敬と暮らすのに警察のファミリータイプの空き室をあてがってくれた。目を覚ますともう太陽が真上に昇っていた。3度いやそれからは覚えていないほど抱き合った。
「私達って子供出来るのかな?」
「そんなこと考えたことなかったな。でも精液は出てるよ」
「インスタントの焼きそばでいい?」
 私が立ち上がると敬が炊事場に立つ。それでテレビのスイッチを入れる。ちょうどお昼のワイドショーをやっている。大写しに小山の週刊誌が写されている。もう私が盗み出したメレンゲの寄付金のリストがぼかして載っている。これは内閣府顧問の作戦のようだ。反主流派のボスの写真を前にアナウンサーが話している。
「シオンはどうしているの?」
「シオンなあ」
 どうも困ったことがあったようだ。
「彼女がシオンに襲われた時に部屋に入ってきて大変だったんだ」
「凄いポーズでセックスしていたんだ?」
「もう度を越えている病気だよ」
「そう昔から病気だった」
「それがね、今はAV女優で3本も出ているよ」
「それは不味いんじゃ?」
 その時チャイムが鳴って覗くと冴だ。
「もう終わった頃と思って?」
「変態だと思っているな?」
「それより仕事よ」





2016/11/26 Sat. 06:50  edit

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秘密基地10 

「どうしたのよ?」
 目を覚ましたら私の横に敬が眠っている。工事車両の中だ。
「応援に来たよ」
 敬が私にキスをする。どうやら冴が充電の限界に来ている私を心配して敬を呼んだのだろう。敬も離れていると疲れが積み重なるのだ。あの秘書が福島のメレンゲの相棒が必要になったのだ。
「今日は二人で調査して。ここは比較的安心だから。これは党の建物の地図よ。事務長室は最上階の党首の部屋の横にある」
 夜になって二人で野党の入っている建物に入る。ここにはとくにセンサーもなさそうだ。事務長室に壁から入るとちょうど事務長が鞄を持って部屋を出て行くところだ。この顔は一度メランゲの本部で見たことがある。この鞄を持ったのは背広を着た男だ。
「あの鞄に2千万も入っていたよ」
「やはりメレンゲの金が使われているのよ。敬は引き出しからキャビネットを調べて、私は金庫に顔を突っ込んでみる」
 敬といるだけで妙に元気になる。金庫の中にはまだ5千万も札束が詰まっている。札束の下に抜き取られてた寄付の一覧表が出てきた。やはり勘が当たった。
「敬あったよ。これ凄い!」
 何と反主流派のボスに今年だけでも3億もが流れている。
「戻るよ」
 工事車両に戻るとさっそく寄付の一覧表を冴に見せる。車の中で冴は顧問に直接に連絡を入れている。
「私これからこれを持って会議に出るわ」
「私も?」
「ゆかは敬とやることがあるんじゃ?」




 












2016/11/24 Thu. 07:13  edit

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秘密基地9 

 連日双方の中傷が続き予断を許さない状況にある。
 私は懐かしいメランゲの本部の建物に入った。だが大半の医者と看護婦と人体実験に係わる資料は運び出されてしまっている。ただ助成金の関係で本部の移動はできないでいる。上階はすべて空き室になっていて、1階にはわずか警備員がいるだけで、2階にすべての職員がいる。
 夜になるのを待って2階に降りてキャビネットの中を懐中電灯を持って覗きまわる。この部屋にはやはりセンサーが至る所に付いている。作業としては思ったより大変だ。朝が明けるまですべてのキャビネットを見たが、寄付の記録だけが外されているようだ。
「どうだった?」
 戻ってきたのを感じたのか冴が覗き込んでいる。疲れたのかすぐに起き上がれない。
「見つからない。その部分だけが抜き取られている。ひょっとして福島に移されたのではないかと?」
「どうかしら?でも野党側は秘書の国会証人喚問を要求したわ。それで福島のメレンゲの施設を警察で監視させているけど、最近公安の車が頻繁に入ってきている。はやり出廷をしてくるのではないかと。それほど今双方互角なの」
「今メレンゲの代表は?」
「今回の新党の事務長として兼務している。今やメレンゲは新党の金庫なのよ。これを見て?」
 冴は特捜のファイルを出してくる。
「これは内閣室で調査したものだけど、過去10年間で1000億がメレンゲに投資されているわ。内閣室では少なくとも3割ほどは留保されていると踏んでいる。その金が今回新党の結党資金に逆流している。これを是非とも調べたいのよ」
「事務長の部屋を調べて見て?今日はそこに潜るよ」
「分かった。すぐにそこにNTTの工事車を向かわせる」




2016/11/23 Wed. 07:01  edit

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秘密基地8 

 東京に戻って特捜会議に出る。内閣府顧問が出席している。
「やはり秘書は福島にいたか」
 報告書を見ながら顧問が頷く。
「選挙の方は思わしくない。それで内閣はやも得ず財務大臣を退任を受けた。秘書の証人喚問は今のところなくなったが証拠が出ると不味い」
「それはゆかが盗み出してここにあります」
 冴が答える。
「それから明日には小山が今回の秘密基地の連載を始めます。それであの息子の調査は?」
 特捜の背広組が調査書を回す。
「やはり息子は親父の病院で医者をしていましたが、調査では病死となっていました。秘書は息子の死亡とほぼ重なり1年後メレンゲの職員として採用されています。予想通り息子が今の秘書と見て間違いないと思います。このことも記事に書いてもらっています」
「冴とゆかのコンビでやってほしいことがある」
 顧問が言葉を強める。
「メランゲの本部に潜って貰いたい。これは野党の資料でメランゲの帳簿に財務大臣の支払が記されていたが、ここに野党の議員の名があると思うのだ。だがこれはコピーではだめだ」 
 と言うことでさっそくNTTの工事車両に冴と乗り込む。すでに会議中にNTTの了解を取り付けて公安本部の電柱に特捜の作業員が登っている。



2016/11/22 Tue. 06:40  edit

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秘密基地7 

「あれは公安の車よ」
 検問のところに数台の車が止まっている。冴が運転手に声をかけた。特捜の運転手は手前で木の下に車を寄せた。
「手配したのだわ」
 スーツ姿の男たちが制服の警官としゃべっている。
「特捜なら制服を着ているし、警官はヘルメットか帽子を被っているわ。ここから入ったのは調べ済みよ。無線を使てもダメよ。探知している」
「でもここにいるとメレンゲの警備員が来ます」
「私が降りて調べてくるわ」
 横になってすぐに体から抜け出す。最近はこの速度を調整できるようになっている。検問のところに行くとはやり公安が現場を取り仕切っている。黒塗りの車に入ると無線で連絡を取り合っている。膝に地図を広げている。今通ってきた道の左側にも舗装されていない林道がある。その曲がりくねった道を目で追う。ずいぶん遠回りだが隣町に続いている。立ち入り禁止区域外だ。
「冴少し戻ってその林道に入って」
「分かった」
 車はゆっくりとバックをして回転をする。林道に入ると急にそこは深い森のようなところ光が差し込まない。急な登りで所々崖が崩れている。特捜の持っている地図には出ていない道だ。1時間ほど走ると丸太を並べた進入禁止箇所がある。今度は慎重に冴が先に降りて確かめる。
 冴の姿が視界から消えて何やら話声がする。やはりここも公安が張っていたのか。二人の特捜が車を降りる格好をしている。のんびりとした駐在さんが自転車を止めて丸太を横に退けている。
「車を出して!」
と言って車に掛けてくる。
「私達の警察官よ」
 どうもようやく警察手帳が使える相手に会ったようだ。






2016/11/21 Mon. 06:52  edit

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秘密基地6 

 警報が鳴り響いて入口に警備車が3台並びあの警備主任がその1台に乗り込む。私も慌てて警備主任の車に飛び込む。ボディガードが4人ずつ乗り込んだようだ。ゲージが上がって車が飛び出す。
「侵入者は何者か?」
「いえ、今朝守衛が怪しいワゴン車を見たようなのです」
「特捜か?」
 冴たちが見つかったのだ。前の森にワゴンが見えた。大胆にもこちらの3台から発砲した。冴の車も気づいたようで反転して道路の方に向かう。ワゴンには私の体が乗っている。これを押さえられたらお終いだ。道路を出ると立ち入り禁止区域をさらに左に曲がる。道路には捨てられたままの車が転がっている。
 道路から逸れて村の道に入っていく。まだ家はそのまま残っているがもちろん空家だ。細い道が何本もある。冴はここで細い道に入り元の道に回転する気だ。だが行き止まりの危険もある。仕方がない。思い切ってハンドルを掴む。先頭の車が回転する。それに合わせて後の2台が追突してくる。同時に車から離れる。
 冴のワゴンはやはり道のない野原を走っている。
「ゆっくり走って!」
 その声で運転手がブレーキを踏んだ。
「もう追ってこない」
「ゆか戻ってきたのね?」
「これから東京に戻りましょう。いろいろなことが分かったよ。秘書は証人では出てこず裏口座のコピーを渡した。でも私が奪った。まだ本人は分かっていないわ。それにあの秘書透明人間の第1号よ。この映像の男性を調べて欲しいの。」
「これは誰?」
「あの秘書の相棒よ」








2016/11/20 Sun. 06:53  edit

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秘密基地5 

 夜にリビングのある建物に移る。個室を調べまわったが、今のところ実験サンプルはあの年少のカップルだけだった。だが不思議な部屋が一つあった。ここはナースセンターの真横にありセンサーも複数付けられている。それで夜に回した。壁からも入れないので隣の部屋から入ることにした。
 薄暗い部屋にやはりカプセルが置いてある。生命維持装置が付けられていて何度か看護婦が部屋を覗く。その後秘書の顔が覗いた。なぜここに入ってきたのどろうか。秘書は椅子に掛けると懐かしそうに男の顔を撫でる。
「もう目を覚ますことはないのか?」
 男の顔は若い。どういう関係だ。秘書が出て行くまで部屋の片隅で蹲っている。気になって持っていた携帯でこの男の写真を撮った。それから気になっていたリビングのからエレベーターに乗る。どうもこの下にも部屋がある。
「どうして勝手に下りて来たのか?」
と言うボディガードの声がする。彼の横をすり抜けて広い空間に出る。白衣の医師が2人話しながら戻ってくる。
「ここはぞっとするな」
「だが貴重なサンプルだ。今度の年少のサンプルは期待できると思うな」
「あのゆかと敬のカップルが成功の秘訣何だがなあ」
「できるだけ若いうちので会うことで信頼関係を築くのだよ」
 愛の深さが透明人間の生存に繋がっているようだ。冷たいコンクリートの向こうにはあの死体のサンプルが永遠と続いている。
 終わらせないと。


2016/11/18 Fri. 06:56  edit

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秘密基地4 

 再び秘密基地に潜る。至る所に透明人間のセンサーが付いている。やはり地下通路で繋がっている病棟があった。個室が並んでいて廊下にはボディガードが立っている。昔と変わらない。壁を抜けるとカプセルに包帯を巻いた子供が寝ている。私が見た一番の年少だろう。まだ7歳か8歳くらいだ。
「どうだ落ち着いたか?」
 白衣の医者が看護婦に尋ねている。
「熱は下がりましたがやはりこの年代でもセックスさせるのですか?」
「ああ、二つの個体を結びつけるのはセックスしかないと言われている」
「相手は?」
「今日からリビングに出す。用意させてくれ」
 まだ実験は続けているのだ。だが今は秘書だ。廊下に出て医院長の部屋に向かう。ちょうど白衣の秘書が出てきた。彼女の後ろを付いていく。どうも新しい部屋を与えられたようだ。ここもセンサーが付いているので壁から入る。
「待たせましたね?」
 座っているのは見たことのある特捜の男だ。彼はあの事件以降公安に戻された。
「今はメレンゲの警備主任として財務大臣の件を担当しています」
「それで今日は?」
「例の寄付金の証言をお願いしたいと?」
「ここを離れるのは嫌だわ。下手するとメレンゲのことが明るみになる。その代り裏口座の通帳のコピーを渡すから」
 秘書はそう言うと引き出しから封筒を差し出す。警備主任は部屋を出ると食堂でコーヒーを飲む。
『本人は証人で出頭することを嫌がっています。取りあえず裏口座のコピーを持って帰ります』
 上司に報告している。背広は椅子に掛けている。私はゆっくり上着のポケットに手を入れる。それからしばらくしてボディガードが彼を呼びに来てパトカーに乗り込む。






2016/11/17 Thu. 06:58  edit

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秘密基地3 

 建物は完全に電波が遮断されているようだ。私は一度外に出て森の中を見渡す。この道は道路から引き込まれてこの建物で行き止まりになっている。正門に守衛室があって周りは背の高い塀で囲まれている。まるで刑務所のようだ。至る所に防犯カメラが付いている。黒のワゴンは道の入り口の道路の端に停まっている。
「目が覚めた?」
 冴の顔が上から覗く。
「防犯カメラが多くて入れないの。あの秘書は」
「医院長の息子でしょ?」
「そうなの。息子は実験で死亡したことになっている。でもあの秘書が研究員で入った時と同じなの」
 特捜の隊員が運転席で食事をしている。
「ここは今の総理に変わった時から建設を始めている。メレンゲは前の総理の時1500億の建設予算を取っているわ」
 冴は本部にいろいろ資料を調査させている。
「あの息子は透明人間の実験第1号だけど、失敗作のようだわ。だけどどこまでの能力があるか分からないから要注意よ。医院長はここに移ってきていた」
「ここは放射能が強いから長居は出来ないよ。車から出る時は防毒マスクをつけないと」
「建物中は大丈夫よ。でも秘書を連れだすのは難しいと思う。事件の方はどうなっているの?」
「総選挙は始まったけど野党が優勢よ。野党の方も反主流派のボスが下がって分けのわからない男が党首よ。新聞には秘書と財務大臣のベットの写真が出て大変よ」
「私も食事を済ませたら夜にもう一度潜ってみる」
 外は車1台も通らない。







2016/11/16 Wed. 07:00  edit

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秘密基地2 

 雑草だらけの畑の中を1時間、トレーラーが大きくカーブを切る。登り道をゆっくり30分上がって止まる。半島の守衛室がここにもあった。マスクを嵌めてメレンゲの職員が降りて守衛室と話している。
「秘書は医院長室に来るようにと言うことです」
「荷物は?」
「荷物は一番奥の出来たばかりの建物に入れてくれと言うことです」
 それからゆっくりトレーラーが動き出す。トレーラーは半円形の建物のシャッターが開き中に入っていく。どうもここで放射線を落とすようである。秘書が開けられた後部から白衣を着て降りてくる。私は慎重にトレーラーの車体の上から覗き込む。どれほどの設備があるか分からないのだ。
 すっかり秘書の姿が消えると再びトレーラーは動き出す。私は入口まで来て足を止めた。やはり例のセンサーが入口に付いている。それでセンサーのない場所から壁を抜け建物の中に入る。私が入ったところは食堂で白衣を着た職員が3人食事をしているところだった。
 廊下に出るとあの病院にもいたボディガードが入口と廊下に立っている。そのボディガードの立っているプレイトには院長室とある。ここにもセンサーが付いている。私は壁から中に入る。ソファーに見覚えのある医院長と秘書が向き合って座っている。
「戻ってきたのか?」
「しばらくここにいる」
 非常に馴れ馴れしい雰囲気だ。
「総選挙の状況はどうだ?」
「5分5分よ。それより人体実験は?」
「サンプルが集めにくくなった。それに手持ちがすべて押えられている。それより体調はどうだ?」
「私は第1号だけど失敗作だものね。この間にもう一度手術をしてもらうわ」
 第1号?やはり彼女も透明人間だったのだ。私は廊下に出て携帯を掛けるが繋がらない。







2016/11/15 Tue. 06:57  edit

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秘密基地1 

 トレーラーが動き出して5時間になる。荷台の中は40度を超える。透明人間でも暑いのは暑い。運転手の他に2人メレンゲの職員が乗っている。その後ろに黒塗りの車がついていてここに公安の制服が乗っている。時々トレーラーの中を覗き込む。この中は冷房が入っていて秘書は白衣を脱いで下着姿でパソコンに向かっている。隣にビール缶が2本空いている。
『調べて見たけど…』
と冴からメールが戻ってきた。警察が持っている履歴書では彼女は有名大学を出て、そのまま研究所に入っている。だが23歳の時に躁鬱で自殺をしてた。この間1年間は空白でその後メランゲの研究所に入っている。あの病院にいたという記録はない。
『外を覗いてみて』
と新しいメールが入ったのはさらに4時間後だ。トレーラーから首を出すと少し離れたところに黒のワゴンが留まっている。窓から冴の顔が消える。
『ゆかの体乗せて来たわよ。ちゃんと私が念入りに体拭いているからから安心してね。恐らくそのトレーラーは福島の新しい研究所に行くよ。ここは警察でもまだ実態がつかめていないの。大地震が起こって立ち入り禁止区域に前政権の時に作られている。だけど正式な引継ぎがなく今は政府資金ではなくメランゲは独自の資金で運営されているわ』
 ゆっくりとトレーラーが動き出す。秘書の部屋はトイレもあるようで一度も外に出ない。だが運転席とは連絡はしているようだ。一般道に入ったようだ。3時間がったって車が止まった。メレンゲの職員が降りて封鎖された検問所と話している。そのかなり後方に黒塗りのワゴンが留まっている。冴がいつの間にかボランティアの格好でトレーラーの横をすり抜ける。探知機を付けたようだ。
 検問を抜けるとトレーラーと黒塗りの乗用車だけが禁止区域に入る。後ろからは車は来ない。
 メレンゲはこれからどう動くのだ。




2016/11/14 Mon. 07:00  edit

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政争10 

 久しぶりにメレンゲに入った。昔は公安の制服が出入りをしていたがその姿がない。ひっそりしたと言う雰囲気だ。もちろんゆかは透明人間になっている。もう同類はいないと思うが慎重に各部屋を覗いて回る。
「おい、荷物を出すのを手伝ってくれ」
 守衛室から声が聞こえてどこからか作業服の職員が5人出てくる。表に大型トレーラーが留まっている。すでに荷作りは終わっているらしくエレベーターからもどんどん運び出されてくる。表からは公安の制服が警備する中メランゲの作業服の男たちがトレーラーから出てくる。
 入れ替わりにエレベーターに乗り込む。手術室だったところに入ったが、特殊なセンサーが外されていてベットもなくなっている。がらんとした部屋に段ボール箱が積み上げてある。先ほど呼びかけていた職員が部屋に上がってくる。どうも積み込む荷物を確認しているようだ。キャビネットの中もがらんどうだ。
「そろそろ彼女に乗り込んでもらえ」
 やはり秘書はここにいた。この部屋の奥からメレンゲの制服を着た男が顔を出す。この奥の部屋は透明人間が寝ていたところだ。
「今着替えている」
 その声を聞いて私は壁を抜ける。部屋の真ん中に全裸の女が鏡の前に立っている。鏡に映る秘書の顔を見て驚た。あの病院で白衣姿の彼女を見ている。だがそれ以上は思い出せない。なぜか慎重になれと言う指令が脳に来る。見えないのに壁に隠れた。鏡に下腹が映る。膣の上に深い傷がある。これと同じ傷を見たことがある。これは失敗した透明人間にもあった。
 彼女が白衣を着て部屋を出る。表に待っていた制服の男が一歩下がる。彼女はエレベターを降りるとトレーラーに乗り込む。トレーラーの奥には特別な部屋があるようだ。
『冴、これから秘書とトレーラーに乗る。秘書の履歴を一から調べて』






2016/11/13 Sun. 07:52  edit

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政争9 

 総理の片腕の財務大臣の不正寄付金で国会は騒然となった。攻撃の中心は新党だ。だが新党も足並みがそろっていない。反主流派のボスの秘書が逮捕されたのだ。これはどちらも双方の仕掛けだ。だが総理側の方が痛手は大きい。メレンゲからの寄付を財務大臣は8千万受けていたのだ。
「座って」
 ゆかは東京の特捜の会議室に入る。中央に内閣官房室の顧問が座っている。その周りに制服の特捜の幹部が6人座っている。その中に冴がいる。いつの間にか出世したようだ。冴が資料をみんなに回し説明する。
「今回は財務大臣の私設秘書の調査よ。32歳、財務大臣の彼女になったのは7年前。こちらの調べでは彼女はメレンゲの研究員だった。その頃はメレンゲは政府の主要な機関で、彼はその頃反主流派のボスと同じグループにいた。彼はメレンゲの資金も見ていた。それが今の総理が引き抜いて財務大臣にした」
「財務大臣が裏切っていたのか?」
「そうではありません。私設秘書の彼女が単独で行ってきたようです」
 顧問に答えている。
「まず、行方不明の彼女を探すことからです。ここに調査したいポイントが8か所あります」
「よし、特捜50人を出そう」
 会議が終わると冴はゆかを連れて職務室に入る。今はゆかも特捜の制服を着ている。
「ゆかは私と一緒にメレンゲに入るよ。私の勘だけどメランゲが怪しい。でもここには特捜は入れない」
「けどメランゲは透明人間の対策がされているよ」
 特殊なバリアーで侵入を発見するのだ。
「だけどもう今のところ向こうには透明人間はいないわ。じっくり時間をかけ調査すればいい。明日からあのラブホテルに泊まり込む。私は公安の建物の見取り図を手に入れたからここにバリアーを書き入れる。秘書は後からでいいわ」





2016/11/12 Sat. 07:07  edit

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政争8 

「冴が来てくれたのね」
 特捜のワンボックスに車が大阪の公安の裏の駐車場に留める。夜になってからゆかが体から出る。ここは東京の本部ほど警戒は厳重ではない。公安の建物からこの駐車場にも入れる。ゆかはポケットに携帯を忍ばせている。建物の中に入ると1階の奥に仮眠室がある。これはあの弱っている女の方に聞いた。
 ベットは4つあり真ん中の2つに寝かされている。鍵は内から施錠されている。夜のうちに戻ってくる予定だったようだ。ゆかは携帯のメールを打つ。
『奥の裏口を空けておくから担架を2つ運んできて』
 ゆかは廊下に出て裏口の鍵を開ける。待っていたように担架が運び込まれる。冴が4人にきびきびと指示を送っている。だが1階の当直室から公安が2人出てくる。冴が飛びかかっていく。ゆかは当直室に入って電源を切る。それから後ろから公安の一人を蹴り飛ばす。こういうこともできるようになっている。
 冴が出たのを確認して鍵を閉めてゆかはすり抜ける。すでに担架はワゴンに運び入れられていて走り出している。冴は私が乗るのを待って公安の玄関を見ている。公安の隊員が飛び出してくる。それを待つように冴がエンジンを入れる。囮になるようだ。
「どう?」
「うまくいったよ。これから追っ手をまくよ」
 冴は大通りを走り抜けると急に横道に入る。ここは一通になっている。後ろも付いてきている。ゆかは起きて後ろを見ている。
「よし」
 工事車両が瞬間に道を塞ぐ。ここまで用意していたようだ。それから回り道をして敬の部屋に行く。ワゴンはすでに道路脇に留まっている。二人を透明人間になったゆかがワゴンに誘導する。ワゴンには縛られた二人の体がある。





2016/11/11 Fri. 07:14  edit

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政争7 

 朝立ち上がれないほど疲れている。少し目をつむって体の外に這い出る。敬は昏睡状態だ。二人の裸も抱き合ったまま寝ている。見えるわけではないが二人を引きずって押入れに入れて毛布を被せる。
『冴、こちらで透明人間を二人捕まえた。特捜を回してくれないか?』
『どこに送れば?』
『敬のアパート、分かる?でも体を見つけないと』
 携帯を切ると敬を起こす。
「少し元気が出た?」
「うん」
「時々戻ってこないとね」
「もうすぐこの二人が力が尽きてくる。そしたらその体を見つける」
 敬はテレビをつける。ニースが始まっている。反主流派のボスが画面にでている。ついに与党を出ることを決めたとある。新党は反主流派の35名と野党3党からから40名が合流すると見られている。この数字と残った与党では僅差になる可能性があると伝えている。
 恐らく新党に対抗するために総理は解散を考えているとも言われている。新党の旗を持って再当選は難しいと思っているようだ。ゆかにとって今総理が変わればあの病院を暴くことができなくなる。今は大半が福島に移動したようだ。またそこで人体実験は続けられる。
 まず向こうに残っている実験サンプルをゼロにすることからだ。敬が仕事に出てゆかは横になる。体から抜け出すと押入れを開ける。毛布を掛けた二人が起きている。
「どうだ。そろそろ限界だ。体に戻らないと2度と戻れなくなるぞ?どこだ?」
「大阪の公安だ」











2016/11/10 Thu. 06:53  edit

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政争6 

「あなたもナイフを握れるのね?」
「ゆかか?」
「そちらはどう?」
 男の方は体を寄せる。ゆかもナイフを抜いた。
「私の方が透明人間では先輩だ。案外に透明人間としての動きと出来ることは難しいのよ」
 その言葉が終わらないうちに女の方がナイフを振り回した。まだしっかり握れていない。コツがつかめていない。
「それでは私と戦えないわ」
 ゆかは瞬間に女の後ろに回ってナイフを取り上げる。いつの間にか敬が男を押さえている。やはり敬の方が力は上のようだ。
「教えてあげるけど透明人間でも透明人間なら縛れるのよ」
「まさか?」
「試してあげるわ」
 ゆかは懐からロープを取り出すと看護婦と男を裸にして合体のポーズで縛り上げる。
「それと透明人間はそう長く時間が立ったら元の体に戻る力が弱くなるのよ」
「戻れなくなる?」
「それまで私と敬のセックスを飽きるまで見せてあげる」
 ゆかも敬も体に戻ると今度は本当に69を始める。夜中精を放ち続ける。
「どう、少しは気が貯まってきた?」
「うん」






2016/11/09 Wed. 05:48  edit

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政争5 

 今回は一休みと言うことで特捜も官邸警備を排除した。反主流派ボスが週刊誌で野党の党首と次々会談している記事が出ている。戦略が変更されたようだ。冴は公安の張り込みチームに編成された。だがゆかが公安にいるのはあまり危険すぎると取りやめになった。
 久しぶりの大阪だ。このために長い髪の鬘にサングラスをかけた。新大阪からタクシーに乗って懐かしい萩ノ茶屋で降りる。道路から小道を抜けて商店街通りに入る。『橋本』の暖簾が見える。5時なら敬は炊事場から上がる時間だ。
「どう元気?」
「ゆかどうしたんだ?」
 長靴を手にしてカウンターから出てくる。
「シオンが戻ってきてから大嵐なんだよ。みよちゃんは口もきいてくれない」
「忍び込んできてやったのよね?」
 その姿が目に浮かぶようだ。シオンは会話するようにセックスをする。
「体調は?」
「はやりよくない。今夜はゆかとやりたい」
「そうだと思ったよ」
 確かに9時まで飲んでいてもみよちゃんの姿がない。どうもカップルは離れることができないのだろうか。ぶらぶらと1時間も歩き回ってマンションに戻る。
「ねえ、ゆか誰かに付けられていると思わないか?」
 唇を合わせた時に囁くように言う。
「裸になったら私は寝るけどセックス続けてね?」
 ゆかは目をつむるともう体から抜け出した。敬は一生懸命に空になったゆかの中に擦り付けている。部屋の中には二人の男女が立っていた。一人は男にされた若い看護婦だ。手にナイフを握っている。此奴は透明になってもナイフを握れるのか?






2016/11/08 Tue. 07:13  edit

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政争4 

 偽の総理の草案が国会で取り上げられた。これに付いてはすでに総理側でも極秘に対応策を講じている。公安はそのまま反主流派のボスに渡したようだ。この経路は特捜の私服が追った。公安の建物にも見張りを入れた。やはり若い看護婦の相棒がここにいるようだ。書類をホテルに取りに来たのがカップルの相棒だ。
 ゆかは冴と官邸内の休憩室のテレビを見ている。手を上げて野党の議員が前に出てくる。
「これは総理がアメリカと交渉する草案ですね?」
と読み上げている。どうも公安から反主流派のボスを通って野党に回されたのだ。沖縄の基地を移動できないという念書だ。これは総理が書いたものではなく特捜で拵えたものだ。得意満面の野党議員が総理に答えを求める。反主流派のボスが総理を横目で見ながらにやりと笑っている。
「このお示しの草案ですが、これは私の書いたものではなく私の書いた草案はすでにアメリカに送られています」
と現文を読み上げる。
「これは顧問が作っておいたもので確かに私の机にあったものです。それがどういうわけかこの女性が公安に持ち込んだという特捜の報告があったのです」
 この話で反主流派のボスが首を横に振った。もうよせという合図のようだ。
「次は?」
「あの特捜部長の女は消えていたわ。恐らく公安に戻されたと思う。次は特捜部長を見張ってほしいとのことよ。彼を公安の見張りに入れたのよ」
と机の上にファイルを乗せる。ファイルの中には彼の履歴書が入っている。
「シオンはどうしている?」
「彼女はまた飛び出して大阪に戻ったわ。みさきはやはり調子が悪いの」
「一度見舞いに行くわ」
 どういうわけかカップルはカップルでないと長生きできないようだ。




2016/11/07 Mon. 06:21  edit

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政争3 

「205号室を調べたわ。特捜の叩き上げの警部だった。3年前から公安との接触があった。何度か公安の情報で手柄を立て特捜の班長をしている。だが証拠もなく外すこともできないそうだわ」
「それでどうする?」
「ゆかのことは誰も知らない。派遣された特捜の一員だと思っている。それでそれを利用した作戦に切り替えると決まったわ」
 冴はファイルを持ってみせる。
「これは総理がアメリカとの結ぶ草案ですね?」
 同じものが総理の机の上にあって、あの看護婦が盗み出そうとしていたものだ。
「すでに特捜にはこの草案を守るようにとの指示が出ている。これは偽物だ。これを盗ませるのだ」
「私は?」
「それを見守るだけよ。私は205号室に隠しカメラをつけたわ」
 その夜総理は机の上にその草稿を置いて部屋を出て行く。すでに部屋にはあの看護婦が来ている。ゆかはすでにカーテンの中に隠れている。総理はこの作戦を知っているようだ。現在国会の答弁では情報を盗まれて窮地に立っている。看護婦が衣類の中にその草稿を仕舞い込み壁の中に消える。
 やはりあの建物の205号室に消える。部屋に戻ると机に草稿を置く。これを待っていた警部が制服を着たまま待っている。草稿を鞄に入れると慌てて部屋を出て行く。外は冴達が張っているということだ。看護婦はそのまま体の中に入っていく。
 ゆかは警部が慌てて忘れて行った携帯を見つけてポケットに入れる。それから看護婦を覗き込む。男の顔になった看護婦はどこか見覚えのある顔だ。どこで見たのだろう?
 外に出ると警部が車で駐車場から出てきたところだ。冴が乗っているだろう乗用車が壁際に停まっている。警部の車は気づいていないのかその前を通りすぎる。だが予想に反して40分走ってラブホテルに入る。後ろから冴の車も入る。私はラブホテルの案内看板の前に立っている警部を見る。
 警部は案内板で消えている部屋に入る。若い女が迎えて鞄から草稿を受け取り部屋から出て行く。彼女は堂々と外から出て迎えに来た車に乗り込む。それから公安の建物に入る。




2016/11/06 Sun. 06:56  edit

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政争2 

 ゆかは特捜の一員として冴と勤務に就いた。昼のうちに一応官邸内を冴と見て回る。それから特捜のメンバーのファイルを見て後は官邸内の職員のファイルをすべて見た。これ以外の人間が入っているかどうか調べる。怪しい出入りは全くない。
「夜間はゆかは秘書官の部屋を借りているからそこで寝るのよ。私は今日から夜間の担当になる」
 3日間とくにおかしいことはなかった。前回持ち出されたファイルで防衛費の予算の増強が週刊誌にすっぱ抜かれている。それで連日国会で取りざたされている。ゆかは体から抜け出して総理の私室に入る。見覚えのある総理は書類を見ている。ゆかが夜間に活動することは伝えられている。
 ゆかは来賓の椅子に腰かけている。ここがゆかの持ち場だ。壁からすり抜けてきてもこの場所は死角になる。透明人間になっても眠たい時は眠たい。うとうとしていると空気が揺れたような気がして目を開けた。総理が立ち上がって席を離れる。入れ替わるように椅子にあの看護婦が座っている。
 捕まえられるか?いや今は彼女の居場所を見つける方がよさそうだ。彼女は机の上の書類に目を通している。何かを探しているようだ。総理が書きかけていた書類を確認してバックに入れた。彼女は同類が同じところにいるとは思っていないようだ。それにその経験もないのだろう。
 総理が戻ってくるともう壁の中に消えようとしている。彼女が何と特捜の宿泊所になっている建物の中に入る。205号室の中に消える。中に入るとベットに彼女の体が横たわっている。横に特捜の制服を着た男が座っている。ゆかは体に入る看護婦の横でバックから書類を取り出す。ゆかほどまだ起きるのに時間がかかるようだ。
 ゆかは自分の部屋に戻ると冴を呼び出した。
「やはりあの看護婦が来たよ。これ盗まれた書類を取り返した。でも彼女特捜の宿泊所の205号室に特捜の男といたよ」
「スパイが!?」
「私疲れたから寝る」
 冴は慌てて飛び出していく。







2016/11/05 Sat. 06:18  edit

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本丸12 

 真夜中に病院の近くのホテルに着いた。私はすぐに後ろのソファに寝て体を出る。冴もしばらくして仮眠をする。次の瞬間私の昔いた部屋に入る。カプセルにはあの看護婦が男になって寝ていた。次に昔敬がいた部屋に入る。やはりこのカプセルには全裸のシオンが寝かされている。力を入れて顔を抓る。目が明いたが私が目に入らないようだ。
 私はシオンのベルトを外してアナルを舐める。
「来てくれたのね?ゆか?」
「小山は?」
「隣の部屋にいる。昨日二人のセックス検証があった。無理だったみたい。でも私には悪くなかったわ」
「ここにいて服を着ておいて」
 私は次の瞬間隣の部屋に移った。シオンの言うように全裸で寝かされている。ベルトを外して服を着せる。それから戻ると施錠電源を切ってシオンを連れて小山を引っ張り出す。ここは慣れたところだ。一番奥の空き部屋に火をつける。防火設備が作動してシャワーが噴き出す。
 小山はまだ私の存在が分からないようだ。シオンに引っ張られてよろよろ歩く。守衛室は今は誰もいない。鍵を開けると後ろの建物の窓から煙が出ているのが見える。ずいぶん人も減ったのだろう。山の道を走って降りる。冴の車が見つけたのかバックで下がってくる。
 ようやくサイレンが鳴ってガードマンが車のライトをつける。冴は猛スピードで走りだす。私は目を覚ましてシオンの胸を掴む。
「男にされるところだったね?」
「こんなところがあったのね?」
「小山さんは能力なしで処分だったよ」
「でも感じたわ」
「シオンは変態だから」






2016/11/03 Thu. 05:16  edit

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本丸11 

 朝から冴がみさきを取り調べている。現在複製カップルは3チームだがすべてこちらの手に落ちた。だがまだ小山とシオンは向こうの手に落ちたままだ。みさきの話では公安の建物にはいないと言うことだった。テレビをつけているとまさに総理と反主流派のボスが笑いながら話をしている。
 新聞では総裁選が話題に上っている。反主流派のボスと野党が再編成で沸いている。
「みさきはどうなの?」
「本当に野党の再編が起きそうなの。それで公安と警察の戦いは停戦状態よ。動けないのよ。それにみさきは今朝から非常に状態が悪い。医者が言うにはパートナーに何かあったのではないかと?」
「パートナー殺されたかも?冴協力してくれるか?」
「いいわ」
「私の勘ではあの二人はあの病院にいるような気がするわ。小山はどうかと思うけどシオンは検体にはピッタリよ」
「それで?」
「車に私を乗せて行ってほしいの?」
「でも私だけになるわよ」
「準備にかかる」
 私は部屋を出ると隣のみさきの部屋に行く。
「どう?連れ出したのが悪かったみたいね?」
「そんなことはない。私の寿命はもう尽きているように思う。彼は近い将来処分されると言っていたわ。こんな実験もうやめてほしいわ」
 私と敬にも同じ運命が来るのだろう。









2016/11/02 Wed. 05:52  edit

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本丸10 

 みさきは白衣を着て廊下に出る。公安の中は身内感があるのか警戒は全くない。1階まで下りたが出口には制服の警官が2人立っている。もう一度みさきを1階のトイレに入れて建物の外に出る。私は冴がいる向かいのビルに行く。部屋の中には冴の他特捜のチームの5人が監視を続けている。
 私は冴の耳を掴んで机の上の紙にボールペンで書く。冴は私が側に来たことに気付いたようだ。
『1階までみさきが降りてきている。この建物の壁のところにワゴン車を持ってきてほしい。どれほどかかる?』
『追いかけられることも想定して、他の車も手配しておきたい。30分は欲しい』
と書いて私の腕に自分の時計をはめた。
 次の瞬間トイレの中に入った。表に白衣の女性が立っている。みさきはパニックになっている。私が彼女の中に入って言葉をささやく。
「すいません。お腹下っているので」
 私は腕時計を見てみさきにドアを握らせる。
「慌てず外に出るよ」
 トイレから10メートルで警官のいる自動扉に来る。ワゴンが壁からゆっくり動き出している。助手席に冴の顔が見える。
「慌てないで」
 何度も繰り返す。だがその時入口から笛が吹かれる。
「走るよ!」
 ワゴンのドアが開く。同時に制服の警官が走り出す。私はみさきのお尻を押すように車に飛び込む。公安の車にもエンジンがかかる。どうも道を調べてきたのだろう。一通の道を複雑に曲がりながら走り抜ける。後ろを3台の車がサイレンまで鳴らして追いかけてくる。
 前に検問をしている。だがワゴンはスピードを緩めない。通り過ぎると警察バスがその間を埋める。だがそのまま3台が突っ込む。















2016/11/01 Tue. 06:59  edit

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