ふたり

ゆかと敬は全く違う人生を歩んできて別々に死んだ。男と女が入れ替わり新しい人生が始まった。

初めの一歩5 

「こちらに入ってくれ」
 金子が応接室に私を呼ぶ。テーブルにノートパソコンが置かれている。画面にフリーライターの小山が映っている。どうも本が乱雑に積み上げられた部屋が小山の仕事場のようだ。
「ここは今回の仕事のために長期契約したビジネスホテルだ」
 金子が説明する。
「連載開始から反響が多く、編集長から下位のサブ連載から2位の連載としてページも増やされた」
「それはよかった。ゆかの給料が払える」
「だが問題も予想通りに出てきた。あれほど特定な情報を避けたが、ある調査会社から編集長を訪問してきた。私はこの記事には小山と名前ではなく偽名を使っている。名前を明かさないと言う契約だ」
「調査会社はどこだ?」
 画面に名刺を押し付ける。
「大阪の調査会社だ。早急にここを調べてくれ。どうもゆかと敬を特定しているようだ。それも大阪をターゲットとしているようだ。ゆかも注意してくれ」
「はい」
「それと次は二人の病院での記事を掲載する。送ってくれたのをすでに修正した。それをパソコンに入れたからすぐに見てくれ」
「人体実験のモデルは何体まで確認できた?」
「28体までだ。そちらで12体調べてもらったな。これからこの28体の資料を完璧に作る。それを手伝って貰いたい。ポイントは死亡日時と本人の写真。墓の有無。救急車で運ばれた時の症状等。これはいつか記事に載せる時期が来る。何よりも生き証人がゆかたちだ」








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2017/03/24 Fri. 06:51  edit

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初めの一歩4 

「凄いね!」
 パソコンに昨日のラブホに入る不倫カップルのホテルから出てくる写真、部屋に入る後姿の写真が張り付けられていて、彼女が調査文章を書いている。最近は目を見ない限り話しできるようになった。
「もう1年になるから」
「でも私こんな文章書けないよ」
「私子供の時から詩を書いていた」
「金子さんとホテルに行ったことがある?」
「ある」
「エッチされなかった?」
「あの人はもう立たなくなったと言っている。私は一度抱かれたいと詩ばかり書いている」
「気持ちいいよ。チエは幾つ?」
「20歳になった」
「私より姉さんなんだ」
 電話がかかってきてチエが出る。
「はい。はい。納期は1週間ですね。書類は書留で届くのですね?」
「どこから?」
「お得意様の弁護士事務所。離婚調停の調査を依頼してくる。ここの半分の仕事がここから来る」
「チエ、一度弟と寝てみない?」
「なんと大胆な!?」
「私は元男だから。男前よ」
 チエは顔を真っ赤にしている。だが私と敬はセックスマシーンとこの世に生まれた。






2017/03/23 Thu. 07:50  edit

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初めの一歩3 

 朝敬と二人でマンションを出る。
「なんかあの尻を見るとやりたくなるよ」
 布団からシオンの黒のTバックの尻が見える。シオンは戻ってくるとシャワーも浴びずにTバックだけで裸で布団に潜り込む。寝相が特に悪い。私は笑いながら敬の盛り上がったジーパンをつんと突く。これが日課になっている。
「最近は元気だなあ」
 朝事務所に着くともう金子は来ていてコーヒーを飲んでいる。私もサンドイッチを開けて朝食だ。金子もサンドイッチだ。
「奥さんが朝してくれないの?」
「会社を辞めた時離婚したよ。娘は年に何度か食事するがな。ゆかと同じくらいの年かな。だからゆかは娘と同じ感じがする」
 こんな調子で仕事を始めるのは9時半を過ぎてからだ。同僚の女の子はほとんど口をきかない。仲が悪いのではなく自閉症で金子が友達から預かっている。だがパソコンは得意なようだ。
「記事が始まった」
 全国版の有名な週刊誌だ。『黒社会』と言う特集がサブ記事で連載が始まった。ナンバーを暈した救急車の写真がインパクトがある。これは実際のアキラを載せた救急車だ。周辺の景色も暈している。だが文章は私の『ある日』の日記だ。
「まるで私の文章ではなくて凄いわ」
「彼は文才もある。だが問題は反響だな」
「この顔を暈した少年は?」
「ゆかの写真がないのでアキラの写真を使ったようだ」
 ちょっと嫌だなと思う。
「今日は私は何をすれば?」
「私とラブホに行く」
「エッチするの?」
「浮気追跡だよ」
 隣の女性が珍しく笑っている。











2017/03/22 Wed. 06:57  edit

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初めの一歩2 

「敬どうしたの?」
 『橋本』で一人ビールとご飯を食べていると敬が横に座った。まだ8時過ぎだ。
「串カツの呼子やめるよ。アキラの代わりに腹心の男がドラックを売れと言ってきた。もうたくさんだよ。それにゆかと会えない生活は嫌だ」
「シオンやみよちゃんがいるじゃないの?」
「私とゆかは一つなんだと思う」
「一つなのね?」
 私はコップを取ってビールを敬のために入れる。奥の暖簾からみよちゃんが顔を出す。
「明日からここの洗い場と出前の自転車に乗る」
「自転車乗れるの?」
 みよちゃんがいつの間にか教えていたようだ。笑っている。
「出来レースなんだ?」
「朝ゆかと起きてここでご飯を食べて、たまにはデートして一緒に寝る。まだ独り立ちなんて無理だよ。ところで探偵事務所はどう?」
「病院を調べているの。アキラは殺されたそうよ」
「アキラも馬鹿だ」
 元々敬はアキラを嫌っている。
「シオンは?」
「シオンは元々好き女だ。結構カラオケ居酒屋でお尻見せたり、フェラして楽しんでいる」
「敬抱いたな?」
「抱くにはいい女だよ」




2017/03/21 Tue. 06:47  edit

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初めの一歩1 

 生活が一転した。私は8時に起きて立そばを食べて金子探偵事務所に9時きっかりに飛び込む。ジーパンではなくリクルートスーツを買ってきている。男だったころは一度もスーツなど着たことがなかった。敬とシオンは12時過ぎに起きて、二人で『橋本』で昼食をとる。夜は8時に『橋本』で一人寂しくビールを飲む。敬が来るのは9時を過ぎてから。シオンは10時だ。
「ちょっとこちらに来てくれ」
 金子探偵が声をかける。もう一人の女事務員は法務局に出かけている。金子は意外に優しい。コーヒーに凝っていて私にもドリップで入れてくれる。
「小山さんから添削が戻ってきてる」
 これは『ある日』を詳しく思い出して書いたものだ。だが赤線と書き直しで真っ赤かだ。
「彼が言っているのは君のためだ。場所を特定しては危険なのだよ。年齢もダメだよ」
「そうか」
「きっと病院や公安は君を探している。彼も首になった原因はスポンサーの不祥事を記事にしたのだよ。本来ならいい大学を出ていたからエリートコースだったのにな。大阪に来たら時々通天閣で飲む」
「私は元々ボウフラみたいなチンピラでした」
「女になった気分は?」
「あまりよくない」
「あのアキラとは?」
「ただの嫌な奴よ」
「これは小山さんが気にして内緒にしていたことだけど、私は事実を知っておくことが身を守ると思うので話す。私たちが病院の建物に忍び込んだ日、そのアキラは全裸で莚の上に寝かされていた。必要な体ではなかったのだ。すでに薬で殺されていたのだろう」
「殺されていた?」
「翌朝アキラは襤褸切れのように焼却炉で燃やされた」










2017/03/20 Mon. 07:09  edit

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